最終更新日:2026年3月|編集部調査(2026年現行法に基づく)
残業代の基本的な計算方法
残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算されます。多くの会社員が「自分の残業代が正しく払われているか分からない」と感じていますが、実は自分で計算・確認することができます。
厚生労働省の調査では、残業代が適正に支払われていない「未払い残業代」の問題は依然として多く、2024年度の是正事例で未払いが判明した企業数は全国で約1万社以上にのぼります。「泣き寝入り」せずに自分の権利を把握しましょう。
1時間あたりの基礎賃金の計算方法
月給制の場合:(月給 − 除外手当)÷ 月の所定労働時間 = 1時間あたりの基礎賃金
具体的な計算例
月給25万円、通勤手当1万円・住宅手当2万円(除外手当)、所定労働時間160時間(1日8時間×20日)の場合:
(250,000円 − 10,000円 − 20,000円)÷ 160時間 = 1,375円/時間
残業の種類と割増率【2026年最新】
| 残業の種類 | 割増率 | 発生条件 | 計算式(基礎時給1,500円の場合) |
|---|---|---|---|
| 法定外残業(時間外労働) | 25%以上 | 1日8時間・週40時間超 | 1,500円 × 1.25 = 1,875円/時間 |
| 月60時間超の残業 | 50%以上 | 月60時間超える部分(大企業は2010年〜、中小企業は2023年4月〜) | 1,500円 × 1.50 = 2,250円/時間 |
| 深夜残業(22時〜翌5時) | 25%以上 | 深夜時間帯の労働 | 1,500円 × 1.25 = 1,875円/時間 |
| 法定外残業+深夜 | 50%以上 | 深夜に時間外労働が重なる | 1,500円 × 1.50 = 2,250円/時間 |
| 法定休日労働(日曜等) | 35%以上 | 週1日の法定休日に働く | 1,500円 × 1.35 = 2,025円/時間 |
| 法定休日+深夜 | 60%以上 | 法定休日の深夜労働が重なる | 1,500円 × 1.60 = 2,400円/時間 |
未払い残業代の計算例(具体的ケース)
ケース①:固定残業代あり・超過残業のある場合
月給30万円(除外手当3万円含む)・固定残業30時間分を月2万円として受け取っている・実際の残業は毎月50時間の場合:
- 基礎時給:(30万−3万)÷ 160時間 = 1,687.5円/時間
- 固定残業代の時給単価:20,000円 ÷ 30時間 = 666.7円/時間
- 適正な残業単価:1,687.5円 × 1.25 = 2,109.4円/時間
- 固定残業代不足分(30時間):(2,109.4 − 666.7)× 30 = 43,281円/月
- 超過分(20時間):2,109.4円 × 20 = 42,188円/月
- 合計未払い:約8.5万円/月 → 年間102万円
ケース②:サービス残業(記録なし)の場合
月給25万円(除外手当なし)・所定労働160時間・実際は毎月30時間の残業があるが、記録されない(サービス残業)の場合:
- 基礎時給:250,000円 ÷ 160時間 = 1,562.5円/時間
- 本来の残業代:1,562.5円 × 1.25 × 30時間 = 58,594円/月
- 年間の未払い:58,594円 × 12 = 703,125円(約70万円)
固定残業代(みなし残業)制の落とし穴
固定残業代(例:月30時間分の残業代として3万円を含む)という制度を採用している会社があります。この場合、実際の残業時間がみなし残業時間(30時間)以内であれば追加支払い不要ですが、超えた場合は超過分を必ず支払う義務があります。
固定残業代が適法であるためには、①金額が明確に分かること、②みなし残業時間が明示されていること、③実残業がみなし時間を超えた分は追加支払いがされることの3点が必要です。これらを満たさない固定残業代は「無効」と判断され、全額未払いとして請求できるケースがあります。
未払い残業代の証拠収集と請求方法
STEP 1:証拠を集める
- タイムカード・勤怠管理システムの記録(スクリーンショット)
- PCのログイン・ログアウト時刻
- 深夜・休日の業務メール・チャット(Slack・Teams等)の送信履歴
- スマートフォンの位置情報・移動履歴
- ICカード入出場記録
STEP 2:未払い額を計算する
上記の計算式を使って、直近3年分の未払い残業代を月次で計算します。給与明細・源泉徴収票も保管しておきましょう。
STEP 3:会社へ請求または相談機関へ
- 会社(人事・総務)に口頭で相談(まず内部解決を試みる)
- 解決しない場合:内容証明郵便で支払い請求書を送付
- 労働基準監督署への申告(無料・匿名可)
- 弁護士・社労士への依頼(成功報酬型もあり)
- 労働審判・少額訴訟(60万円以下なら少額訴訟が効率的)
残業代が増える・改善されない場合の転職という選択肢
残業代の未払いや過剰な残業が常態化している会社では、改善を求めても限界があることも多いです。「残業が少ない」「残業代が正しく支払われる」会社への転職は、年収を実質的に大幅アップさせる効果があります。月30時間のサービス残業がある場合、それが適正に支払われれば年収換算で50〜100万円の差になることもあります。
読者の疑問Q&A
Q:「固定残業代制」の会社では残業代を請求できないのでしょうか?
A:固定残業代(みなし残業)でも、実際の残業時間がみなし時間を超えた分は必ず追加支払いされる必要があります。また、固定残業代の金額が適正な残業単価より著しく低い場合は、差額を請求できます。「固定残業代制だから仕方ない」と諦める必要はありません。
Q:証拠がない場合でも未払い残業代を請求できますか?
A:証拠がなくても請求自体はできますが、認められる可能性は下がります。タイムカードの記録、深夜のメール送信履歴、ICカード入出場記録、スマートフォンのGPS記録など、間接的な証拠をできる限り集めることが重要です。
Q:未払い残業代を請求したら会社をクビになりませんか?
A:残業代請求を理由とした解雇は不当解雇であり、違法です。解雇されても法的に無効であり、解雇無効または損害賠償の請求ができます。ただし、現実的には在職中の請求は関係が悪化することもあるため、退職後に請求するケースも多いです(退職後も3年以内であれば請求可能)。
まとめ
残業代の計算は基礎賃金の正確な把握から始まります。固定残業代制でも実残業が超過した分は必ず請求できます。証拠を集めてから会社と交渉し、解決しない場合は専門機関に相談しましょう。